EVの6kW充電器は必要?3kWでは足りない?知っておきたいポイント
<最終更新日2023.10.20>
ここ数年で国産車でも60kWh以上の大容量バッテリーを搭載するEVが出てきました。
そこで気になるのが「自宅に設置する普通充電器を3kW、6kWのどちらにするか」です。
3kWコンセントはここ数年に建てた住宅では標準装備のお宅も多いので、付け替えて増強するとなると自宅の工事や、電力プランの見直しが必要です。
コストをかけて6kW充電器を設置すべきかを解説します。
(結論)「60kWh以上のEVで、200km以上を連日走行する人」以外は3kWで充分
- 日産 アリア 全グレード
- 日産 リーフe+
- テスラのほとんどの車種
他にもあるかもしれませんが、上記で9割以上でしょう。
リーフの40kWhの通常モデルは3kW充電器でまず問題ないでしょう。
そもそも40kWhリーフで連日200km以上という使い方は、現実的ではないです。
冬場やバッテリーが消耗してくるとかなり厳しいと思います。
一度バッテリーを空にすると、3kW充電器で満タンまで丸1日(以上)かかる
バッテリー容量が60kWhの場合、3kWの充電器で60÷3=20時間 かかります。
ほぼ丸一日でしょう。アリアの高容量モデル(90kWh)などは30時間かかります。
当たり前なのですが、ガソリン車と違い、使い切った後には「充電時間」というインターバルが必要です。
例えば上の写真(リーフe+ 60kWh)の状態から充電するとします。
1時間で充電できる量は3kWで5%分です。
10時間しか充電できなければ、次の日の長距離ドライブは50〜60%のバッテリー状態でスタートになります。
途中で1〜2回程度の充電が必要になり、1時間程度は時間をロスすることを覚悟せねばなりません。
3kW充電器の場合、夜に帰宅し、翌朝にまた数百キロのドライブということは、かなり厳しいのです。
6kW充電器だと一晩でほぼ満タン
では、6kWの充電器が自宅に設置されているとどうなるのでしょうか?
6kW充電器は3kW充電器の2倍速ですから、リーフe+で10時間、90kWhアリアで15時間です。
ほぼドライバーの睡眠時間+αで充電が完了できます。
したがって、「今日300km走行して、明日も朝から300kmという使い方」が(ほぼ)できます。
この使い方をする予定があるかないかが、3kW充電器・6kW充電器のどちらを選ぶかのポイントです。
3kW運用なら、外出先で一旦急速充電してから帰宅するのもあり
頻繁にではなく、「年に数回、連日数百km」という使い方であれば、3kWで問題ないです。
1日で200〜300km走行するのであれば、高速道路のSAや日産ディーラー、道の駅など、どこか急速充電器がある場所の近くは通るはずです。
200〜300kmのドライブには3〜5時間程度かかりますから、トイレ・ドリンク休憩で、1回だけ急速充電の30分を確保するのは簡単です。
1回急速充電をかませるだけで、25〜30kW、40kWhリーフの50~75%、リーフe+で30~50%分に相当しますから、帰宅後の充電時間を短縮することができます。
6kW充電器の設置・ランニングコストに注意
同じ値段なら、3kW充電器よりも6kW充電器の方がいいに決まっています。
しかし、3kW・6kW充電器のコスト差があるので注意が必要です。
このコスト差についての説明です。
長くなりますので、必要な方だけ読んでください
【コスト差その1】充電器(家側・車側)設置コスト
イメージしづらいのですが、日産製EVの充電器は「家側」と「車側」の2つで1つなんです。
200Vコンセント+純正充電ケーブル(3kW)の組み合わせです。
ほとんどの日産EVユーザーはこのパターン。
最近の住宅では、200Vコンセント(3kW)の普及率は上昇しています。
「EVは持っていないけど、家にEVコンセントはついている」という方も多いでしょう。
ボンネットの中にある黒い箱。
この中に「車載用充電器(3kW)」もしくは「車載用充電器(6kW)」が収納されています。
上記が前提知識です。
この「家側」「車側」それぞれについて、3kWと6kW充電器があるのです。
(A)「家側の」充電器(充電ケーブル)の費用
日産のEV各車について、衝撃的な事実です。
サクラ、アリア以降、「充電ケーブル(3kW)」がオプション扱いとなりました。
リーフもかつて付属していた「充電ケーブル(3kW)」が別売に変更になりました。
要するに、これから日産のEV(新車)を買う人は、何かしら充電ケーブルの準備が必須ということです。
とても分かりづらいですが、メーカーオプションで他のオプションに抱き合わせで提供されるグレードもあるので、充電ケーブル付属の有無は要確認です。
さて、家側の充電ケーブルが別売なので、自宅充電には以下のいずれかが「必ず」必要になります。パターンごとにおおよその見積もりです。
なお、工事費用はブレーカーまでの距離、隠蔽配線の作業量などにより値段が変わります。
エアコンで200Vを引き込んであって、ブレーカーからEVコンセントまでの距離も近い、ということであれば、10万円以下ということもあります。
(1)200Vコンセント+充電ケーブル(3kW)
最も多いパターンで、ローコスト。最近の新築住宅には3kWコンセント標準装備も多く、その場合には充電ケーブル代(約6万円)だけ。
ちなみに、6kWのコンセントというものはありません。
コンセント(3kW)設置費用(5〜10万円)+充電ケーブル58,960円=約11〜16万円
鍵付きのボックスにする場合もあります。ボックスを開けると上記の200Vコンセントが入っています。盗電や、ケーブルの盗難のリスクを抑えられます。
(2)200Vケーブル付き充電器(3kW・6kW・その他)
コンセントを設置せずに家のブレーカーから電源を引き、壁掛け、ポール・スタンド式の充電器を設置するパターン。
商業施設でよく見かけるタイプ
この場合、充電器にケーブルが付属しているので、3kWケーブルは購入しなくても問題ないです。
デルタ電子:Q-VEC (6kWのみ)
Panasonic: DNH326 (3kW、6kWあり)
テスラ:ウォールコネクター (最大出力9.6kW)
配線工事(5〜10万円)+充電器(20〜30万円)=約25〜40万円
(3)V2H機器各種
- 高出力の電気自動車の充電機能(6kWが多い)
- 急速充電ポートを使うため、車両側充電器の3kWか6kWかに関わらず、6kW程度で充電可能。
- 充電した電気自動車のバッテリーから、自宅に電気を供給できる(給電機能)。
- オール電化プランなど、安い時間帯の電気を溜めておくことで、家の電気代削減に貢献
- 停電時にもEVの電気を使えるため、災害対策としても注目
- ニチコン、デンソーなどが販売。Panasonicなどは自宅の太陽光パネル蓄電池とも連携したより高度なシステムも展開
- 充電ケーブルが付属しているので、3kWの充電ケーブルを購入しないでも運用可能
本体 98万7800円+工事費用(30〜40万円)=130〜140万
高額ですが、半額程度補助金が出ます(2023年 上限75万円)。
車両の充電は急速充電ポート(CHAdeMOポート)を使用します。
(B)「車両側」の充電器の費用
アリア、リーフe+などは「車載用充電器(6kW)」が標準装備ですが、40kWのリーフは「車載用充電器(3kW)」が標準でオプション追加しないと6kWになりません。
「メーカーオプション」なので、後付けできないことに注意。
新車で希望の方は注文時につけましょう。
ただし、単体で10万円くらいかかります。
しかも、2023年4月現在では、何故か同時使用することのない「3kWの普通充電ケーブル」と抱き合わせのオプションで、176,000円と高額です。
やはり、40kWリーフには6kW充電器は不要です。
なお、サクラはそもそも6kWで充電することができません(最大2.9kW)
【コスト差その2】EV充電は、電気「基本料金」の上昇にも注意
電気代は、「使った電気の総量」だけでなく、「同時に使える電気の量(契約アンペア)」によっても上昇します。
東京電力エナジーパートナーによると、オール電化ではない、一般家庭の契約アンペアの平均値は34.88Aだそうです。
電気料金の計算において、契約アンペアは100V換算で考えます。200Vの場合には倍の力で電気を流しているので、100Vの倍のアンペアを消費していると考えます。
ざっくり比較です。これらの機器の合計が契約アンペアを超えるとブレーカーが落ちます。
ご自宅の契約アンペア数を確認し、普段使っている家電のアンペア数を合計してみましょう。EVに30Aを割り当てるのはなかなか大変です。
- スマホ充電(PD20W):約0.2A
- 42型液晶テレビ:最大2A
- 電子レンジ(600W):最大6A
- ダイソンのドライヤー(1200W):最大12A
- IHクッキングヒーター中火(火力5):10A
- IHクッキングヒーター強火(火力9);30A
- 14畳リビングエアコン(200V):最大25A
- EVの3kW充電(200V):常時30A
- EVの6kW充電(200V):常時60A
- テスラのウォールコネクタ 最大出力:常時96A
オール電化の家庭では、2-3人家族では6kVA(60A)、4人家族では10kVA(=100A)の契約が一般的です。
オール電化4人家族の我が家も10kVA契約です。
EVの充電は3kWでも電子レンジ5台分、6kWなら10台分の電気を使います。
6kW充電は「オール電化ではない家2軒分の電気」を一度に使って充電するようなものです。
基本料金も高くなり、東北電力の場合、3kW分(30A)契約アンペアを増やすと330円×3=990円ほど毎月高くなります。6kW分(60A)なら1980円の上昇です。
基本料金なので、電気を使っても使わなくてもかかる費用です。
契約アンペアを下げるほど基本料金は安くなりますが、同時使用するアンペアが契約アンペアを超えるとブレーカーが落ちます。
オール電化の家庭であったとしても、6kVA契約で、EVの6kW充電をすると、他の家電が一切使えなくなりますので注意が必要です。
オール電化ではない家は、3kW充電だったとしても、50〜60Aへの契約アンペア変更をお勧めします。
【コスト差その3】ピークコントロール対応の6kW充電器もあるが、高額
ピークコントロール(ピークシフト)充電とは、
「家庭内の電力使用量を監視し、ブレーカーが落ちないよう、リアルタイムでEVへの充電量をコントロールすること」です。
電気自動車の充電に EV・PHEV充電設備対応住宅分電盤(Panasonic)
なぜこんな商品があるかというと、
「6kW充電したいけど、ブレーカーが落ちてIHやドライヤーが使えないのは、困る。でも契約アンペアをあげて毎月基本料が高いのは嫌。」
というニーズを満たすためです。
「6kW充電器つけるから、契約アンペアをアップは必要だろう。」という考えであれば不要です。
- 契約アンペア数を上げずに6kW充電器を設置できる(電気代の基本料が上がらない)
- 出力がコロコロ変わるので、充電完了時間がわかりづらくなる
- 6kW充電器に制御用の部品をつけたり、「機器連携機能つきの6kW充電器」というさらに高いタイプの6kW充電器が必要
- 充電器の他に、スマート分電盤・AiSEG2など家に設置する機器が増える(工事代金・設備金額UP)
といった事情もあります。おそらく、普通に6kW充電器を設置するよりも、十万円〜余計にコストがかかると思います。
高いコストを払って、ちまちま電気をやりくりするくらいなら、そのコストを上乗せして、バッテリー容量が大きいEVを買いましょう。
そして、普段は3kWで運用し、必要な時だけ日産なり、イオンなりで、急速充電をする方が幸せになれると思います。
まとめ:自宅充電速度よりもバッテリー容量優先が吉
いかがでしたか?
3kW充電に比べて6kW充電はコストがかかります。
当たり前ですが、充電器にコストを掛けても、車の稼働率を上げられるだけで、一度の走行距離は延びません。
普通充電の設備に何十万円もかけるよりも、その費用を車両代に追加し、より大容量のバッテリーの車を買った方が「絶対に」幸せになれます。
すごくアバウトな表現ですが、充電回数が半分になると、ストレスは1/4になります。充電回数が1/3になれば、ほぼストレスはありません。
これは私が、100kmしか走らないe-NV200から、350km走るリーフe+に乗り換えて強く感じたことで間違いありません。
ぜひ参考にしてください。