MINI Electric|mini初の完全EV。スペックや試乗記録まとめ
miniといえば、愛らしいルックスで女性はもちろん、熱心なファンの多いブランド。
ミニにもついに、EVが発売されました。この記事はそのスペックや魅力、試乗で感じたことをまとめています。
- miniとエネルギー危機
- MINIの車種・グレード解説
- MINI Electricとは
- THE NEW ALL-ELECTRIC MINI COOPER
- THE NEW ALL-ELECTRIC MINI ACEMAN
- THE NEW ALL-ELECTRIC MINI COUNTRYMAN
- THE NEW ALL-ELECTRIC MINI ACEMAN 試乗
- 運転の楽しさは健在
miniとエネルギー危機
BMW傘下に入ってからのminiは「ニューミニ」と呼ばれますが、イギリスのブリティッシュモーターコーポレーションの製造していたminiは初代ミニは「クラシックミニ」「BMCミニ」「ローバーミニ」などと区別されます。
この初代ミニは、実は1959年代後半のヨーロッパにおけるオイルショックを受けて、大衆層が1,000ccクラスの乗用車を維持するのが困難になったために開発されたという経緯があります。
ただし、ロード会長は単に経済性を優先した居住性や操縦性などの劣るチープな車を作ることを許さず、開発陣は、ボディと駆動系のコンパクト化によって経済的な車を作る判断をします。
結局はその決断が「ゴーカートみたい」と評されるハンドリングや愛らしいルックスを生み、1959年の発売以来、2000年までの41年間に渡り一度もモデルチェンジすることなく製造されるという稀に見る長寿の車となりました。
したがって、miniにはエネルギー危機の歴史が刻まれており、昨今のEVシフトの流れは、ある意味必然だったのでしょう。
やることは決まっていたけど、どのようにminiらしさをEVで表現するか、という点に十分に検討した上で開発したと思われます。
MINIの車種・グレード解説
ミニにあまり馴染みがない方もいると思うので簡単に解説。今までのガソリン車のMINIでは
- ベースの「ONE」
- エンジン制御プログラムの変更による高出力の「COOPER」
- スーパーチャージャー付きでさらに高出力の「COOPER S」
- 走りとスタイリングを最も高めた「JCW(ジョン・クーパー・ワークス)」
というのが基本的なグレードの序列です。
これにボディタイプの違いで以下の車種があります。
- 3ドア:フロント2ドア+トランクのスタンダードなMINI
- クラブマン:トランクドア、サイドドアが観音開きのステーションワゴン。
- カントリーマン:4ドアのSUVタイプ。日本名はクロスオーバー。「クーパーS ALL4」では唯一の四輪駆動モデルの設定あり。
- コンパーチブル:3ドアベースのオープンカー。
- クーペ:2シーターの車高が低いスポーツモデル。
- ロードスター:クーペをベースにしたオープンカー。コンパーチブルと違い、2シーターで独立したトランクがある
- ペースマン:カントリーマン(クロスオーバー)をベースにしたSUVクーペ。
クラブマンやクーペ、ロードスターなど玄人向きの車種にはONEの設定がなく、COOPER、COOPER S、JCWだけの展開のものもあります。
MINI Electricとは
「MINI Electric」とは、その名の通り、miniのEVシリーズの名称です。
今回発売されたのは
- THE NEW ALL-ELECTRIC MINI COOPER.
- THE NEW ALL-ELECTRIC MINI ACEMAN.
- THE NEW ALL-ELECTRIC MINI COUNTRYMAN.
の3車種。1と3のCOOPERとCOUNTRYMANはガソリン車にもラインナップがありますが、2のACEMANはEV専用の完全新モデルです。
THE NEW ALL-ELECTRIC MINI COOPER
MINIのスタンダードモデル3ドアハッチバックのEVモデル。誰もがイメージするMINIのEV進化系。
今までのガソリン車のMINIでは、エンジン性能でCOOPER S>COOPER>ONEという序列が設定されていました。
EVのMINIでは、「THE NEW ALL-ELECTRIC MINI COOPER.」という車種の中に、「E」と「SE」というグレード設定がされています。
おそらく、EはElectric、SEはSports Electricの略でしょう。
これにパッケージオプションでEならClassic>Essential、SEならJCW>Favoured>Classicの順でホイールがより内装がおしゃれになったりします
EよりもSEの方がバッテリー容量も、モーター出力も大きいです。
E | SE | ||
車両型式 | ZAA-12GC32 | ZAA-22GC32 | |
駆動方式 | 前輪駆動 | ||
全長 | 3875mm | ||
前幅 | 1745mm | ||
前高 | 1455mm | ||
乗車定員 | 4人 | ||
航続距離 | 344km | 446km | |
バッテリー容量 | グロス値 | 40.7kWh | 54.2kWh |
ネット値 | 36.6kWh | 49.2kWh | |
交流電力量消費率 | WLTCモード | 127Wh/km | 133Wh/km |
市街地モード | 114Wh/km | 118Wh/km | |
郊外モード | 120Wh/km | 128Wh/km | |
高速道路モード | 138Wh/km | 145Wh/km | |
出力 | 134kW(184PS) | 160kW(218PS) | |
0-100km加速 | 7.3秒 | 6.7秒 | |
価格(税込) | 4,630,000円~ | 5,310,000円~ | |
令和6年度CEV補助金 | 65万円 |
スペックだけを見ると、2024年のEVとしては、平均的でやや平凡な印象。
ガソリン車の頃からそうでしたが、MINIはスペックだけで選ぶ車ではなく、どちらかというとスタイル重視の車のため、これくらいでいいのかもしれません。
気になるのが、バッテリー容量について、2種類の記載があります。
- グロス値:バッテリーの保護容量(使えない部分)まで含んだ容量
- ネット値:ユーザーが使えるバッテリー容量
ネット値とはどういうことかというと、リチウムイオン電池は、「充電切れ」の状態になっても、「保護容量」という電池を保護する部分が残っています。
保護容量がどれだけあるのか、というのは公開していないメーカーも多いです。
しかし、そこそこの容量があって、メーカーのさじ加減によるのですが、概ね10〜15%程度だと言われています。
THE NEW ALL-ELECTRIC MINI ACEMAN
エースマン。
サイズ的には中間サイズ。
EV専用の4ドアモデルです。MINIの王道は2ドアですが、やはり時代の流れなのか、4ドアのシェアが増えているよう。
E | SE | ||
車両型式 | ZAA-32GC32 | ZAA-82GC32 | |
駆動方式 | 前輪駆動 | ||
全長 | 4,080mm | ||
全幅 | 1,755mm | ||
全高 | 1,515mm | ||
車両重量 | 1670kg | 1740kg | |
乗車定員 | 5人 | ||
航続距離 | 327km | 414km | |
バッテリー容量 | グロス値 | 42.5kWh | 54.2kWh |
ネット値 | 38.5kWh | 49.2kWh | |
交流電力量消費率 | WLTCモード | 140wh/km | 144wh/km |
市街地モード | 129wh/km | 127/wh/km | |
郊外モード | 133wh/km | 138wh/km | |
高速道路モード | 150wh/km | 157wh/km | |
出力 | 135kW(184PS) | 160kW(218PS) | |
0-100km加速 | 7.1秒 | 6.9秒 | |
価格(税込) | 4,910,000円~ | 5,560,000円~ |
3ドアモデル「THE NEW ALL-ELECTRIC MINI COOPER」と比べてEのバッテリーを少し増やしてあります。
一方で、上位のSEクラスのバッテリー容量は据え置き。
増やしてあるとは言っても、Eの航続距離327kmは、冬場の運用は忍耐を要すると思います。
SEの方はTHE NEW ALL-ELECTRIC MINI COOPERのSEと同じ54.2kWhのバッテリー容量です。
個人的には、上位モデルで400kmちょいの航続距離は短いと思います。
400kmそこそこの走行距離はLEAF(40kWh)とほぼ同じ。
冬に氷点下になる地域だと暖房もそれなりに使うので、SEで250kmというところでしょうか。
THE NEW ALL-ELECTRIC MINI COUNTRYMAN
日本名「MINIクロスオーバー」の後継車種「COUNTRYMAN」のEVバージョン。
今でこそクラブマンも4ドアですが、以前はMINIの4ドアモデルは少なかったので、ガソリン車の頃から一定の人気があるモデルです。
先代のMINI クロスオーバーは、全長4,105 mm×全幅1,790 mm×全高1,550 mmだったので、ここからさらに40cmもサイズアップしています。
4,500mmクラスSUVのカローラクロスやスバルXV、アウディQ3、VOLVO XC40とほぼ同サイズ。
高さがあるので、結構大きく感じます。トヨタのRAV4くらいのサイズがあります。
ミニという名前にはあまりにつかわしくないサイズ感は好みが分かれると思いますが、3ドアに比べると車内は相当余裕があります。
長距離移動をしても後部座席から不満の声は出ないでしょう。
E | SE | ||
車両型式 | ZAA-32GC32 | ZAA-82GC32 | |
駆動方式 | 前輪駆動 | 四輪駆動 | |
全長 | 4,425mm | ||
全幅 | 1,845mm | ||
全高 | 1,640mm | ||
車両重量 | 1890kg | 2020kg | |
乗車定員 | 5人 | ||
航続距離 | 482km | 451km | |
バッテリー容量 | グロス値 | 66.5kWh | |
ネット値 | 非公開 | 非公開 | |
交流電力量消費率 | WLTCモード | 154wh/km | 162wh/km |
市街地モード | 149wh/km | 158wh/km | |
郊外モード | 145wh/km | 153wh/km | |
高速道路モード | 163wh/km | 171wh/km | |
出力 | 150kW(204PS) | 225kW(306PS) | |
0-100km加速 | 7.1秒 | 6.9秒 | |
価格(税込) | 5,930,000円~ | 6,620,000円~ | |
CEV補助金 | 65万円 | 65万円 |
快適な一方で、やや気になるのが、車両重量と電費・航続距離。
4WDモデルのSEグレードでは、2tを超えており、かなり重い印象です。
東京から新潟県湯沢町のスキー場に行くとなると往復350kmなので、最低1回、状況により2回の充電が必要と予想します。
スキー場に頻繁に行く身としては、AWDは魅力ですが、その魅力を雪道や山道などのある地方への旅行などで活かすとなると「帯に短し、襷に長し」な航続距離という印象です。
ARIYAのB6 e-4ORCEが、車両重量2050kgで、66kWhのバッテリーを搭載していて、460kmの航続距離です。
MINIはプレミアムブランドですから、SEには80〜90kWh程度のバッテリーを積んで、550~600km程度の余裕のある航続距離の設定があると良かったと思います。
一点追記しておくと、
「THE NEW ALL-ELECTRIC MINI COUNTRYMAN」のみ、充電受け入れ能力について記載があります。E、SEいずれについても、
- 急速充電:130kWの直流による急速充電
- 普通充電:9.6kWの交流電源
をサポートしています。
THE NEW ALL-ELECTRIC MINI ACEMAN 試乗
運転の楽しさは健在
MINIに乗ったことがある人ならわかる、ワクワク感。
EVになってエンジン音はなくなりましたが、遊び心は随所に生きています。
BMW傘下になって20余年。
インパネ周りはかなりスタイリッシュになりました。国産車ではなかなか見られないおしゃれで遊び心のある内装は、多くの人を魅了しています。
特に円形のディスプレイは誰もが驚くでしょう。
まとめ:MINIが好きな人が選ぶべき車
全体的に、バッテリー容量や航続距離は控えめに作られている印象を受けました。
正直なところ、航続距離については心許ない印象です。
しかし、ガソリン車の頃からそうでしたが、燃費や速さなど単一の物差しで選ぶ車ではなく、MINIという車が好き、という人が買うべき車なのだと思います。
そう考えると、短めの航続距離も日常の相棒として多少目をつぶって使う車なのかもしれません。