電気自動車(EV)急速充電器について知っておくべき3つの事情
電気自動車(EV)を何年も乗っている人からすれば、充電器についての常識が結構あります。
しかし、これらの事情を全く知らずにEVを購入すると「あり得ない」と感じる可能性があります。
ネガティブな情報も含まれるので、ディーラーでもあまり説明されないと思います。
ただ、割と重要なので、あえて説明します。
(1)急速充電器の出力は充電器によって「かなり」違う
速い充電器は90kW、遅い充電器は20kW程度
通常、国産EVで使用できる急速充電器は最高で90kWの出力の充電器です。
この90kWの充電器で1時間充電すると理論上は90kWhの電力量が充電されます。
1時間の半分、30分間充電すると45kWhの電力量が充電されます。
- 50kWの急速充電器→30分間で25kWhの電力量(リーフ60%分)
- 20kWの急速充電器→30分間で10kWhの電力量(リーフ25%分)
ざっくり、急速充電器の出力÷2 が1回30分間の充電で入れられる電力量です。
なぜ「30分」を強調するかというと、多くの急速充電器は「1回 30分間をユーザーが占有して充電できる時間」としているからです。
30分経過後に車を移動して交代するというのが、どこの充電器でも注意事項で書かれています。これはトラブル防止に重要なので、覚えておきましょう。
20kWの急速充電器は、はっきり言ってかなり遅いです。
申し訳ないが、急速とは言えないくらい遅いです(しかし設置数は多い・・・)
よほどバッテリー残量が少ない時以外は使うことはないと思います。
速い急速充電器でも出力制限をかけている場合がある
同じ急速充電器でも状況により出力が変わることがあります。
2台同時充電の時に制限がかかる充電器
日産のディーラーにある新型充電器が該当します。
この充電器はEVを2台同時に充電できますが、出力を「シェア」することに注意。
アリアを1台で充電すると90kw、リーフe+を1台だけで充電すると70kWの出力です。
ところが、2台目の車両を接続すると40kW台まで出力が絞られます。
急速充電器保護のために、出力を絞る設定を適応している
イオンに設置されている充電器によく見られます。
特に夏場に、充電器を熱から保護するために50kW→30kW程度に落としていることがあります。
(2)車両の受け入れ可能な電力量も重要
急速充電器がいくら出力が高くても、繋いだEVにどれだけ大電流を流せるか(受け入れ能力)によっても速度が変わります。
搭載バッテリー量が少ない場合
旧型のリーフ24kWhバッテリー搭載車、アウトランダーPHEVなど搭載バッテリー量そもそも少ない場合には、充電器の最大出力が発揮されなかったり、発揮される時間がごく僅かになります
逆に、アリアなど最新の大容量バッテリーを積んでいるEVはバシバシ大電流を受け入れることができるので、凄い電力量が入ります。
バッテリーの温度が低い場合
バッテリー温度が低いと、充電器の出力が大きくても、充電電流にセーブがかかります。
外気温10℃くらいまでならあまり気になりませんが、0℃、氷点下になると大きくスピードダウンします。
44kW充電器で30kW〜35kWくらいに落ちる印象です。
新型の日産の充電器は降雪、氷点下でも最大出力に近い出力(リーフe+で65kW〜70kW)が得られます。制御が改良されているようです。
バッテリーの温度が高い場合
真夏に高速走行→急速充電を繰り返すと起こりやすい現象。
充電スピードは大きく低下。
熱によりバッテリーも傷みやすくなるので、できるだけ避けた方がベター。
充電が遅くなるだけでなく、走行時の最高速度も制限されるので、予定に大きく影響します。
(3)持ち帰る電力量は異なるが料金は同じ!?
衝撃の事実がこれ。
速い充電器、遅い充電器、車によって沢山充電できる、少しだけの充電しかできない・・・
色々ありますが、基本的には、時間で課金されます。車種や状況は全く考慮されません。
- 90kW充電器でアリアを30分間充電(ゲスト利用)して、充電できた量は45kWhだった。→1650円
- 20kW充電器で24kWhリーフを30分間充電(ゲスト利用)して、充電できた量は10kWhだった。→1650円
使う充電器、車種により持ち帰る電力量は何倍も差があるのですが、充電料金は同じなんです。
※ZESP3の場合
慣れたユーザーは、その充電器の損得を判断して充電器を選んでいます。
(まとめ) EVの充電器には情報収集と「慣れ」が必要
いかがでしたでしょうか。
EVをすでに使っている方からすると、「あぁ、そうだよね」ということですが、なかなか使って(苦労しないと)分からない事情です。
めんどくさい、と思う方も多いと思いますが、私個人はこういう試行錯誤が好きなので苦ではありません。
EVは、まだまだ発展途上の技術の製品です。
こういう試行錯誤が楽しめるかどうかが、EVを買って大丈夫かの判断ポイントと言えるでしょう。