【EVの質問】何キロ走る?雪国は無理?電気代は?ユーザーが回答!
雪国で7年、14万キロの走行したEVユーザーの私がEVについてよく周りの人からうける質問や、心配事に回答します。
ぶっちゃけ何キロ走る?
A:初期型・低価格EVでは最悪100km以下。最新型・高容量型であれば400kmも夢ではない
よく聞かれる質問です。
やはり皆さん航続距離(連続走行距離)が気になるようです。私が14万キロをEVで走った感覚をお答えします。
何も考えずに、普通に走るとカタログ記載の50~60%くらいの印象です。エアコンなしでエコ運転すれば70%に届くくらいです。
逆に高速でぶっ飛ばし、エアコンガンガン、だとカタログの走行可能距離50%を切るでしょう。
ちなみに、ガソリン車でもカタログ値の6-7割というのは普通です。
車名(バッテリー容量) | カタログ掲載航続距離 | 実際の走行可能距離 (エアコンなしエコ運転) 7km/kWh (サクラは9km/kWh) | 実際の走行可能距離 (スタッドレス・暖房) 5.5km/kWh (サクラは7km/kWh) |
リーフ(24kWh) | 228km | 130-150km | 100-120km |
リーフ(40kWh) | 322km | 200-240km | 160~200km |
リーフe+(60kWh) | 450km | 300~350km | 240~280km |
サクラ・ekクロス EV (20kWh) | 180km | 140-160km | 110-120km |
注意点として、電気自動車のバッテリーは、全ての容量を使えるわけではありません。
リチウムイオンバッテリーは空にしてしまうと、バッテリーが傷むので、「保護領域」という走行に使えない容量が存在します。
日産に関しては、正確な値が公表されていないようですが、掲示板などの報告を見るとバッテリー容量の15%程度と考えておけばいいと思います。
<例1>
40kWhリーフを、電費7km/kWhで走った時、航続距離は(保護容量15%)
7km/kWh×40kWh×0.85=238km
<例2>
60kWhリーフe+を、電費5km/kWhで走った時、航続距離は(保護容量15%)
5.5km/kWh×60kWh×0.85=280.5km
と実際の走行可能距離にかなり近い感覚です。
外での充電ってタダなの?
A:ほとんど有料です。
10年ほど前、リーフが出始めの頃はイオンが無料充電を提供していたり、認証システムが未整備の急速充電器は無料で使えたりということがありました。
今は、ほぼ有料です。
数は少ないですが、公共施設、例えば市役所などで無料充電ができるところがあります。
阿賀野市役所(新潟県阿賀野市)の急速充電器。充電料金は無料。
認証機や施錠もなく、充電器のスイッチを押すだけで使える。
ただし、役所なので、事務所や守衛の方に鍵を借りて充電ガンを取り出す、開庁時間のみ利用可能など制限があることも多いです。
また、競争率が高く、充電待ちにあう確率は高いです。
外で1回充電するのにいくらかかるの?
A:充電プラン加入の有無、認証方法によっても変わる
これは難しい質問です。
「会員になっているか、そしてどの決済システムを使うかで変わる」としか言えません。
ガソリンスタンドでも、
- 「プリカ3円/L 引き!」
- 「現金限定 2円/L引き!」
- 「車検入庫ユーザー様 5円/L 引き!」
など支払い方法や、属性によって価格が変わることがあります。
ガソリンは、「少し値引きされる」くらいの感覚ですが、EVの充電は「時間あたりの単価」が大きく変わってきます。
しかも単価の表示の仕方が違うからわかりづらい。
「携帯電話の通話料」に近いイメージです。
- A社→30秒の通話が21円」
- B社→「1ヶ月の無料通話100分込みで 基本料2500円」
こういう時、損か得かどう判断しますか?
「自分が使う量と単価」を考えますよね。たまにしか通話しない人ならA社の方が安く済むし、それなりの時間を通話する人ならB社の方がいいでしょう。
EV充電の場合は、「kWh」が電力量の単価です。
30分で入る電気の量は25kWhです。
- WAONで認証すると1回30分が300円
→300÷25=12円/kWh の単価 - 日産「ZESP3 プレミアム40」だと月額4400円で日産ディーラーや、高速道路、道の駅などの充電器も含めて月に100分利用できる。
→4,400円×30/100÷25=52.8円/kWh
ということで、同じ場所に設置してある、同じ充電器で、同じ車を充電したとしても、認証方法によって4倍以上の単価の価格差です。
実際には、充電器には「出力の差」というもう1つの変数もあり、さらに状況が複雑です。
出力の低い充電器を、最も損な認証方法で使うと、100円/kWhを超える充電器もあるので、10倍くらいの価格差になります。
家での充電は1回いくらぐらいなの?電気代高そう・・・
A:電力会社、プラン、車によるが、安い人なら数百円くらい。高い人だと数千円もありえる
電気自動車のバッテリー残量10%から100%まで充電する状況を考えます。
車種 | バッテリー 容量 | 10→ 100% 電力量 | 10円 /kWh の場合 | 20円 /kWh の場合 | 30円 /kWh の場合 | 40円 /kWh の場合 | 50円 /kWhの場合 | カタログ航続距離 |
サクラ ekクロス EV | 20kWh | 18kWh | 180円 | 360円 | 540円 | 720円 | 900円 | 180km |
(旧) リーフ | 24kWh | 21.6kWh | 216円 | 432円 | 648円 | 864円 | 1080円 | 228km |
リーフ | 40kWh | 36kWh | 360円 | 720円 | 1080円 | 1440円 | 1800円 | 322km |
リーフe+ | 60kWh | 54kWh | 540円 | 1080円 | 1620円 | 2080円 | 2700円 | 450km |
アリアB6 | 66kWh | 59.4kWh | 594円 | 1188円 | 1782円 | 2376円 | 2970円 | 470km |
テスラ モデル3 パフォーマンス | 82kWh | 73.8kWh | 738円 | 1476円 | 2214円 | 2952円 | 3690 | 567km |
当然、バッテリー容量が大きい車の方がたくさん蓄電できるので、1回あたりの電気代は高くなります。
テスラのモデル3 パフォーマンスなどは「1回の充電で3000円!?」と思ってしまいがちですが、少なく見積もって、350km〜400km程度は走行できます。
そう考えると、ガソリン代よりも安いと考えることもできます。
自宅の充電器設置費用はいくらぐらい?
一軒家、持ち家の場合
- ブレーカーから、設置したい場所(車庫)までの距離が重要(~15m以内)
- 最安なら~10万円程度
- 200V引き込みがあるか
- 契約アンペア数に余裕があるか
数年前まではリーフを買うと充電設設備設置費用のサポートがあったのですが、終了しました。
2021年に築40年の私の実家にEVの充電コンセントを設置しました。その時は7万円ほどでした
充電器で3kWと6kWどちらを設置するかは以下の記事をご覧ください。
集合住宅の場合
マンション・アパート等の集合住宅や賃貸駐車場への充電設備設置サービスを提供している事業者があります。管理組合との交渉も必要なので、問い合わせしてみましょう。
注意点としては、これらの業者に導入してもらった場合、基本的には導入会社の決済システムが組み込まれ、充電のためのコストが割高になったり、使い勝手がシステムに左右されることでしょうか。
集合住宅の設備として、町の電気工事屋さんに工事をしてもらって自前で設置して、鍵を各家庭に渡せば安く上げることはできます。
しかし、共用部分である駐車場の電気使用量をどのように測定して、充電器ユーザーが支払うかという問題があります。
共用部分だからといって、均等に負担するのは公平性として問題があります。
通常はこれらの業者のサービスを使うのが一般的でしょう。
結局EVとガソリン車どっちが安い?
A:ランニングコストはEVの方が安いが、車両価格の高さがネック
EVの方が、ランニングコストは安いです。
【Q5】の表で、50円/kWhの単価というのは、電気代単価としてかなり高い想定です。
- 東京電力「従量電灯B」 40.69円/kWh
- 北海道電力「従量電灯B」 45.45円/kWh
- 北海道電力 「ドリーム8エコ(ピーク抑制型時間帯別電灯)」
ピーク時間(16-18時) 83.3円/kWh
実際にはこの単価に「±燃料調整費」「+再エネ賦課金」が調整されます。
2023年7月は、燃料調整費が東京電力-2.95円(/kWh)、北海道電力-2.4円(/kWh)。
再エネ賦課金は2023年 全国一律で 1.4円(/kWh)
さらに国の電気料金激変緩和措置により-7円の補助が入りますので、この金額よりも8円程度安くなります。
電気自動車とガソリン車のランニングコストを比較するために「1kmを走るのに、いくらかかるか」を調べます。
<電気自動車>
電気の単価が50円/kWhとして、普通に運転すると、電費は6km/kWh程度(サクラであれば7-8km/kWhは余裕)でます。
50円/kWh÷6km/kWh=8.33円/km
1kmを走行するのに、8.33円です
<ガソリン車>
リッター15kmのガソリン車とすると、ガソリン価格が150円ならば、
150円/L÷15km/L=10円/km
1kmを走行するのに10円かかります。
ガソリン価格が今後130円とか、120円とかになって、電気代が50円/kWhで高止まりすれば、逆転する可能性もありますが、ガソリン価格が下がっている時には、電気料金に反映される燃料調整費も下がるので、ある程度連動するはずです。
あとは、ガソリン車では必要だけど、電気自動車で安く済む費用としては
- エンジンオイル、オイルフィルター交換費用(5000~10,000円)が不要
- 10万キロで必要なタイミングベルトの交換費用が不要
- 自動車税が1Lのガソリン車と同額の29,500円で普通車では最安
- 部品数が少なく、車検での部品交換費用、工賃が安い
- 車種にもよるが、中古車が激安
逆に電気自動車で高くつく費用としては
- タイヤの減りがガソリン車よりも速い
- 充電会員になった場合の月額費用(ZESP3で4,400円〜)
- 自宅充電設備の設置費用
- 車両価格
- 下取り費用(が安くなる)
やはり車両価格が最大のネックでしょうか。ざっくり、同じ車格の車より100-150万円くらい高い印象です。
サクラで乗り出し300万円という話を聞きます。日産の軽、DAYSの乗り出しが160-170万円なのを考えると、かなり割高な印象です。
補助金を使って多少安くはなりますが、それでも割高です。
さらに、下取り費用がガソリン車に比べてかなり安い、というのが悩ましい点。
フィアットの500eを見に行った時に、
「値段の下落が激しいため、「残価設定クレジット」が設定できず、リース契約のみで販売という形になってます。」(フィアットのディーラの担当者)
という話も聞きました。
フィアット 500e
しかし、逆にそれは中古EV車が激安で買えるというメリットの裏返しでもあります。
試乗車や、サービスカー(車検時などの代車用途でディーラーが持っている車)上がりの状態のいい車がかなり割安で売られていることもあります。
充電設備は、最近の新築住宅だと3kWhのコンセントが標準装備というお宅も多いです。
マンションでも着々と(補助金を使って)普通充電器が整備されているので、案外追加費用なく自宅の充電設備が手に入るかもしれません。
【Q6】雪国だと「EVで立ち往生」とかやばいんじゃない?死ぬと思う。
A:ガソリン車、EVの差で明暗が分かれることはないと思う
(個人の見解です)
よく言われることです。
真冬の大寒波で「立ち往生の長い行列に巻き込まれた時にEVだと凍死する」説。
雪国12年目、EVでスキー場に何百回も通っている私の個人的な意見です。
「冬の雪道ドライブで無茶する人は、EVだろうが、ガソリン車だろうが死ぬ」と思うのです。
大雪で交通が大混乱しそうな時には、事前に国土交通省などから情報がでます。
新潟でもバイパスの電光掲示板に「立ち往生の危険あり、不要普及の外出控えて」など、数日前からしつこいくらい表示されます。
「天気が荒れてやばそう」という時には車で外出しないことです。
ガソリン車だからって、立ち往生したら、タダではすみません。
- 雪道をノーマルタイヤで走らない。
- 雪で運転が不安なら車に乗らない。
- 雪国は11月下旬になったら、早めにスタッドレスに履き替える。
- スタッドレスタイヤは、劣化がひどくなるまで使わない。
- スタッドレス履いていても急ハンドル、急加速、急ブレーキは絶対にダメ!
- 雪国では、雪下ろしブラシ、金属スコップ、長靴はトランクに必須。
- スタックした時には周りの人と助け合い。
- 「寒ければエアコン」に頼りすぎず、ブランケット、上着など防寒具を多めに積んでおくと安心。
逆にいうと、「大雪の時に車に乗らないのであれば、EVでも問題ない」ということかもしれません。
【Q7】バッテリーが劣化した時が心配・・・
A:劣化は確かにある。でも、かなり状況はよくなった
この心配は、もっともでしょう。
高い車を買って、走れる距離が短くなるのは、価値が目減りしているようで残念な気持ちになります。
ただ、年数や走行距離が伸びると価値が減損するのは、何もEVに限ったことではないです。
ガソリン車でも年数が古くなるほど、走行距離が伸びるほど、下取り、買取価格は下がります。
さらに人気によっても大きく変動します。
今でこそ中古でも人気のハイブリッド車ですが、プリウスも初代、二代目の頃は「バッテリーが劣化して交換すると70万円」と言われて、敬遠されていました。
しかし、三代目からはバッテリーを交換するということはほぼ聞かなくなり、街でも多く見かけるようになりました。
では、EVはどうかと言うと、「初代リーフの頃は確かに劣化が気になったが、二代目リーフはかなり気にならなくなった」と言うレベルまできています。
納車直後と今の8万キロを比べれば、確かに航続距離は短くなっていますが、ざっくり1割程度でしょうか。
「気にならなくなった」理由は、「バッテリー自体の容量が大きくなった」のが大きいです。
24kWhのe-NV200に乗っていた時には、そもそも納車直後でも130km程度しか走りませんでした。
それが、8万キロを乗った後は、100kmギリギリになり、運用が非常に難しくなりました。
今の62kWhのリーフe+であれば、乗り始めの頃は370km程度の走行距離が表示されていましたが、今は330km程度の表示です。
確かに劣化はしているのだけど、「1割減った時のダメージ」は小容量EVの方が大きいです。
40~50kWh程度の容量以上のEVであれば、航続距離が減ったとしても、大きな支障にはなりづらいです。